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野良ネコ龍ちゃん、虹の橋を渡る
今週の初め、千葉県某市にある僕の飼い主の知人宅に、見知らぬ野良ネコが突然姿を現しました。ご近所の方たちも初めて見るネコとのことでした。ところがそのネコは、全身が真っ黒に汚れ、体毛は掻きむしられて血で固まり、地肌が出て見るも無残な「ぼろ雑巾」のような様相でした。そのネコが知人宅の前で身動きもせず何かを訴えているようだったので、異常を感じた知人はすぐそのネコを捕獲し、的確な診察と治療で定評のある動物病院へ連れて行きました。
先生の診断結果は絶望的なものでした。それでも体にレボリューションを塗り、点滴注射をしてもらって、知人と野良ネコは一旦知人宅へ戻ってきました。物置小屋でご飯を出すと美味しそうにたくさん食べたので、知人は一安心し、そこに野良ネコを住まわせました。
翌日は終日雨の降る寒い日でした。朝、知人は野良ネコのことが心配になり、ネコのいる物置小屋へ行ったところ、ネコはいませんでした。慌ててあたりを探し回ったけれど見つからなかったので、諦めて家へ戻ってくると、玄関の横にそのネコがじっと座って知人の来るのを待っていました。体は冷え切って明らかに低体温症を引き起していたので、知人はびっくりしてネコを物置小屋へ連れて行き、ダンボールとペットシート、柔らかい毛布で暖かいベッドを作り、携帯カイロを敷いてそこへ誘導すると、ネコは安心したかのように眠りにつきました。
それでも知人は何か不安を覚えたのか、僕の飼い主へ連絡をしてきました。飼い主もとるものもとりあえず知人宅へ駆けつけました。前日の夜病院へ連れていった時には、まさか翌日野良ネコがこんな状態になるとは夢にも思わなかったそうです。
運悪く前日連れて行った動物病院はこの日はお休み。そこで知人と飼い主はつてを頼り、この日は営業していて、猫仲間の間で評判が良いという別の病院へ野良ネコを連れて行きました。
また名前がないと何かと不自由なので、知人と僕の飼い主は、そのネコに「龍ちゃん」という名前をつけました。
知人が、前日動物病院で行った処置を先生に話し、点滴注射をしてもらえないかと頼みました。点滴注射をしてもらえば少しは持ち直すと考えたからです。院長先生は、真剣に龍ちゃんを診察・治療してくださり、またこの野良ネコの龍ちゃんを不憫に思われたのでしょうか、3日ほど入院させて頂ければ少しは良くなるかもしれないと提案されました。そこで知人と飼い主は先生に一任することにしました。
その時、龍ちゃんはほっとしたような、とっても嬉しそうな顔をしたそうです。知人も飼い主もその顔が目に焼き付いて離れないと話していました。
どこの地域でもそうらしいのですが、病気の野良ネコ(あるいは地域ネコ)を診察したり、入院させてくださる動物病院はあまりないそうです。野良ネコはそれほど邪魔もの扱いされているのが現状です。飼い主がいないという理由で、野良ネコたちは過酷な環境に追いやられています。ネコにだって正当に生きる権利はあると僕は思うのですが・・・
でも今回お世話になった両先生は、野良ネコでも差別することなく真剣に診てくださいました。僕も元は野良ネコでしたが、このような優しい先生たちがいらっしゃることを知りとても嬉しくなりました。
犬猫病院の先生の話では、龍ちゃんは翌朝は元気になりご飯をたくさん食べたそうです。そこで先生はひょっとしたら少しは持ち直すかもしれないと安堵したとのことでした。しかしその後、龍ちゃんは突然痙攣を起こしあっけなく虹の橋を渡ってしまいました。先生は、「龍ちゃんの体をきれいに拭いてあげたいのだけれど、疥癬がすごくて院内感染の恐れがあるのでできなくて申し訳ありません」とおっしゃいました。とんでもありません。最後は優しい先生に看取られて龍ちゃんは旅立ったのです。龍ちゃんはきっと先生に感謝していると僕は思います。
両先生の話を総合すると、龍ちゃんはかなり老齢のオスネコ(20歳以上)で、歯はまったくなく、昔は飼い猫だったのではないかとのことでした。でも龍ちゃんは、最後の最後まで生きる望みを捨てず、悲惨な状態にも拘らず残された力を振り絞って生きようとしていました。その姿に知人も僕の飼い主も圧倒され、何とか助けようと後先も考えず、ただただ必死に行動していたそうです。
龍ちゃんは大往生でした。両先生、本当にありがとうございました!

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龍ちゃん、お疲れ様でした。もう体はどこも痛くはないよね。初代のガンバさん、たーちゃんやさっちゃんたちと虹の橋のたもとで会えたかな・・・
ほんの数日の出会いだったけれど、知人と僕の飼い主は龍ちゃんから大切なことを学んだとのことでした。
龍ちゃんの途中からの猫生は悲惨だったかもしれないけれど、龍ちゃんは最後は日本一、いえ世界一すばらしい二人の獣医さんに診てもらったんだよ!ネコのボランティアさんたちも驚いています。奇跡だって。龍ちゃんは虹の橋の仲間たちに、このことは自慢できると僕は心から思います。僕もいつか虹の橋を渡った時、龍ちゃんのお話をたくさん聞かせて欲しいです。それでは龍ちゃん、お元気で!
ガンバ二世
(平成26年10月18日)
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